沙耶の唄 感想
冬なのに暑くなったり寒くなったりとでおかしいこの頃、ほんっと勘弁してくださいって感じですね。皆様今日も元気にお過ごしでしょうか?
2003年に発売されたこの作品は、現在win10対応版が出ているのでこちらでプレイするのが良さそうですね。総プレイ時間も短く、あっという間に終わりますが、サスペンスホラーADVなだけあり過激な描写が多いです。CGに関してはグロテスク表現にぼかしを入れられますがテキストは容赦ないです。私ですか?ぼかしなしでやりました。
概要・あらすじ
交通事故により脳に残った後遺症が原因で、現実世界の見え方、聞こえ方など五感が狂ってしまった主人公匂坂郁紀は、ある日病室で唯一人の姿に見える少女沙耶と出会う。その後2人は共に暮すようになり、郁紀は沙耶の父奥涯を探し、沙耶は郁紀が喜ぶもの・場所を作ろうとする。そんな2人の行き着く先は…
やっていけばわかりますが、手塚治虫の火の鳥復活篇を思い起こさせる内容です。私は中学生時代に火の鳥を何度も読み返していたのですぐに思いつきましたが、クトゥルフ神話を思い出す方も多いようですね。こちらについては私全く知りませんでした。
とはいえ、どちらか一方を知っていれば作品の着地点がなんとなくでもわかるのかもしれませんね。さて、以下ネタバレ感想。
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郁紀の世界観はどう変わったか
交通事故で奇跡的に助かり作中では最先端の医療技術で生還した郁紀ですが、彼の五感はすっかり変わってしまっていました。
人が醜い肉塊に見え、喋り声は甲高いものに聞こえ、目に見える景色はめちゃくちゃで遠近感もつかめないほど。部屋中を色んな色のペンキでぬりたくらないと安心できない状態。後に遠近感や写真を見られるところまでは回復しますが見た目が変わらない。食感も変わってしまい人間が普通に食べるものが美味しく感じず、美味いと感じたのは人肉…とまあめちゃくちゃです。サスペンスホラーの名に恥じない設定ですね。
こうした世界の中で唯一まともに自分と同じ人間に見えたのが沙耶。沙耶が人外の存在だというのに気づくのに遅い方はいないと思います。
END① 病院へ
沙耶に元の生活を送れる自分に戻りたいかと問われた際に、戻りたいと選んで進むルート。
沙耶はもともと人外の生物で、液状のドロドロした何かなのだと思います。そんな彼女に備わっている能力が、生物の構造を変化させること(ただし事前の学習が必要)でした。郁紀との度重なるセックスにより入手した精子から得た情報とカルテから可能にしたことだと思います。
隣家の鈴見を郁紀と同じ状態にしたのと逆のことを行うだけで実際にあっという間に終わります。が、郁紀が現実の世界に戻ったその隣に沙耶はいませんでした。
このルート、郁紀がすぐに警察に電話して逮捕され病院へいくまでの流れがとにかく早い。そして精神病棟へ入れられたある日、ドア越しに沙耶と携帯を使ってやりとりをしている所だけを見ると、純愛かこれは!?と叫びたくなるから困る。
沙耶のかわいいままの自分の姿を覚えておいてほしいというのは乙女のそれですし、郁紀のあいしてるって言葉を伝えるときの演出といい。。。
END② 開花
元の状態に戻りたくないを選んだルートの終わり方その1。親友であった耕司を始末した直後に沙耶の背中から羽のようなものが出現し世界に散って世界が変わっていくお話。
沙耶の開花時のCGがとても綺麗ですばらしいです!とはいえ、世界は沙耶と郁紀にとって住みやすいものになっていったのかなと思います。街は汚れていきますし、人の形も変わっていく。最後は涼子の視点で綴られていますし、涼子自身の体にも変化が起きている模様。
END③ 耕司生存
元の状態に戻りたくないを選んだルートの終わり方その2。耕司のピンチに駆けつけた涼子の液体窒素により沙耶に致命傷を与えるも、郁紀の反撃で涼子は瀕死からの最後の一撃で沙耶を死に追いやります。沙耶を失った郁紀はその場で自殺。自殺のやり方がエグい。一方残されたのは耕司だけ。
彼だけが真実を知り、真実を知ったが故に生涯苦しむことになるというなんとも救われないルートでした。
しかし、このルートでは沙耶は死ぬ間際まで郁紀に寄り添おうとします。この作品は各ENDに共通する事象として、郁紀と沙耶の愛は本物だったということが挙げられるのではないかと思います。終わり方は違えど、最後まで郁紀も沙耶も互いを想い合っていたと感じます。
結局どういう作品だったのか?
この作品は自分には難しく理解に少々時間を要しました。何が言いたいのかはっきりわからないけど、真実に近づき過ぎてもいけなくて、かといって知りたいという欲求は抑えられないもの。また、一度壊れてしまった世界を修復するということの難しさ、虚しさ、愚かさといったようなことを感じました。
沙耶ってかわいいなって思ってかるい気持ちでやると爆死するんじゃないかなあって思います。
演出が凝っていて、登場人物の視点によって世界の見え方が全く違うことをよく表現していたとも感じました。難しい作品でしたが、こうして感想という形で自分の思ったことを言語化してみました。最後までお読み下りありがとうございました。